昨日は孤独な世界?/錯春
グラウンドに飛び降りる。
そこでようやく頭の端に、今日は絵画の塾の日だったことが思い出される。
彼はしぶしぶリュックを背負い、鉄棒に背を向ける。
(いや、やっぱり忘れることにしよう。あの茅の中に、僕は何も見なかった。または、見たとしても、それは何でもないつまらないことだった、なんて)
忘れること。
それは彼にとって、今すぐできる最高にクールな行動であるかに思えた。
事実、皆が騒ぎ立てるニュースになる可能性を秘めた出来事に遭遇しても、「何ともない自分」を想像することは、凄く格好良かった。
だが彼は、自分が必ずしも自分の思い通りには動かないことに、まだ気付いていない。
彼が、今
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