刻まれたものは擦り切れるまでは息遣いで在り続ける/ホロウ・シカエルボク
 




取りこぼした一日のことを思いながら濡れた路面を漂っている午後の温い焦燥、底が破れ始めた靴のせいで靴下はすぐに嫌な湿気を持つ―吐き出したガムの形状が悲惨な最期を遂げた誰かみたいで、名前を思い出す前に踏みつぶして殺した
たくさんのアドレスに電話をかけた夜のことを思い出す、他者を介さなければ判らない真実があるって信じていた時代はいつの間にか昨日へ流れていた―流れてしまえばすべては同じ昨日、そこにどんな特別な思い入れがあったとしてもさ―太陽の光はさりげなく注がれていたけどもう暖かくなることは無かった、ほらみろ
我々は否応なく冬のさなかへ押し込まれる、ラッシュ・アワーに雪崩れこむ乗客みた
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