幸福に満ちた世界の中で/
なかがわひろか
かれて
寝たきりになった
不幸が少女を見舞いに行くと
少女は泣きながらあなたのせいよと言った
不幸が幸せになる代わりに
少女は不幸せになっていた
不幸はもう二度と少女と会うことはなかった
不幸はまた不幸に戻っていった
不幸はもう誰も愛さなかった
誰とも口をきかなかった
不幸は日々を一人で過ごした
不幸はいつしかたくさん年を取っていた
ある日曜日の朝冷たい布団の中で
不幸は死んだ
(「幸福に満ちた世界の中で」)
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