フルムーン・ラプソディー/渡 ひろこ
て
受け入れてしまいそうで
崩れ落ちないようにキッと寡黙な蒼い夜を見据えると
街路樹から逃れて宙(そら)に泳ぎついた月が
オリオン座をぼんやり照らす
振り切るように足を速めると
ふいに身体が締めつけられるような気がして立ち止まった
いつの間にか蒼の裂け目からしなやかに下りる
橙色に捕われてしまったらしい
月の唇から零れ落ちるラプソディーが
投網となって巻きついてくる
センチメンタルを舐め盗りながら、ぷっくり膨らむ月
私のあと一歩の戸惑いと逡巡を手のひらに乗せ
朧に化粧しながら
次第にゆるゆると芳醇な茜色を醸し出す
纏った想いをすべて剥ぎ取られ
凍えながら見上げると
霞んだベールの間から
月は捕えた獲物にうっすら笑った
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