<SUN KILL MOON>-too/ブライアン
 
 今まであったものが、全く違って見える。かつて「他人だった自分」が、空に浮かんでいる。「自分」は近づきすぎてはいないか。遠くから見る月に。いつしか視ることで触れたのではないか。月を。触れる。接点が生まれる。視覚の限界で、月の光と交わる点が。「自分」と「他人」が接する。どこまでが「自分」だったのだろう。どこまでが「他人」なのだろう。「自分」は近づきすぎたのだ。

 1968年天体観測に夢中だった少年が、一枚の月の写真を撮る。月の周囲は闇といえなかった。闇にしては優しすぎる色だ。灰色。かすんでいる。月の輪郭もまた、曖昧だった。ぼやけている。印象派の画家のような写真。淡く、揺れ動く世界。けれど、写真
[次のページ]
戻る   Point(0)