季候に順う/小野カオル
ンドウの電光は、明暗の無いふやけた空気の中で境界がくっきりせずあまり主張が無い。それがかえって一面の淡灰色のキャンバス地と馴染んで美しかった。
風景がいつもと違って見えたのは、人出のせいだけではないと気がついていた。こんな風にものがよく見えるときはたいてい、私の方に理由があるのだ。後で見たテレビのニュースが言っていた。先週から昨日までこの季節にしては高い気温でしたが、今日は平年並みに戻りました。明日からも肌寒い天候が続くでしょう、と。それで腑に落ちた。どうしても天候に気分が左右されてしまう。あのひっそりとした淡灰色の空は、いつの間にか私の中にも入ってきていたらしい。
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