夏の終わり/佐藤伊織
 
ピアノの一音が消えた跡を追うように
虫が数匹宙を舞う

夏が終わったね

古い畳の上で
お茶を淹れながら

誰に向かって
話しているのだろう

いつか
秋の色が
この空を満開にする

毎年やってくる同じ情景に
ただ私の細胞だけが老いている

弔いのために
夏はきた

そして終わりのために
秋はくる


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