青年日和/ゆうさく
 
流産して亡くなった、
弟の御霊(みたま)を
ひこうきぐもの
のこりかすに
重ねて、ないてみる
 
空は胎内
包み込んで
あの子のスカートの
ひるがえしたなかに
いつかの青春が
生まれては消える
 
秋は、のどぼとけ
出ない高声に
腹を立てたら
いろはにほへと、
ちりぬとて
“ここにいるよ”
いろはうた
 
群青の自転車で
おいかけた蜻蛉
淡い夜の夢に
おちて、華火
かなた、初恋
檸檬の音色
夕焼けとかしは
いにしえあそび
 
空がねじれて
またあした
 
放課後の余韻
なにか、ひみつ
誰かが隠したノスタルヂア
橙の斜影
抱きしめた図書館のにおい
あの子の面影
 
ルーズリーフに
詩を綴って
風に溶かして
さようなら
 
空がねじれて
またあした
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