右往左往/伊那 果
 
 どこかに飛んでいくはずだった帽子が
 西日のさすテーブルの上で丸い影を作る
 流し込む午後のコーヒーは
 ざらりとのどを茶色に染める

 丸い影の中を
 赤茶色のありが
 右に左に 左に右に 
 そして 帽子の壁にぶつかる
 
 頭に浮かぶのは
 いつも同じこと
 とらわれている
 思考はとまっている

 右へ左へ 左へ右へ

 私の中心が
 ズドンととまったまま
 抑えこんでいる
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