クジラの氾濫/真鍋 晃弘
いてほしい
他人事じゃないんだ
電車で一駅か二駅ばかり先の
小さな子供だってお駄賃を握り締めて行けるくらいの
小さな距離にあり
もし君がサラリーマンなら
会社帰りに酔っ払って
間違えて降りたかもしれない町の話なのだ
ひょっとするともう
クジラは君の家の縁先に潜り込み
この話を聴いているかもしれない
クジラはもう
ぼくらの生活の一部に入り込み
明日君が出会うかもしれない人やもしかすると
将来の恋人や伴侶のバックやポケットに入り込み
隙間から隙間へと注意深くジャンプし
トラブルや事件を巻き起こしてしまうんだ
僕らはもう
クジラの氾濫から逃れられやしないんだ
僕らはもう
クジラの氾濫から逃れられはしないのだ
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