火傷/ホロウ・シカエルボク
 
かった」とでも言いたげな調子で
おまえはにっこりと微笑んだ
ひとつの線の上のふたつの運命
俺たちは確かに一度生まれ変わったのさ
雨が止むことがなければいいと思った
このまま世界が水没すれば
フィッティング・ルームの箱船の中で俺たちは
アダムの助骨のような言い伝えになれるのに
雨が止むことがなければいいと思った
世界が水没するまで止むことがなければと


枯れた砂漠、焼けつく太陽に
生きる理由まで焦がされながら
あの時の雨の音を思い出す、あの時の
鼓膜を吹き飛ばすような速度のムード、ハニー、もうあんな雨は降ることはないのか
気狂いじみた無数の跳弾の中
世界の外側で痙攣を繰り返した、あの夜の強い雨は
喉が焼けつく、もう少しで
どこかの街に辿り着けるはずさ
錆びたジープの上のカラス
俺の目の奥で燻る思いを見ていた


あれから
何度目の漂流





遠くの道で
激しくタイヤが軋んだ



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