自由意志と責任−「存在の彼方へ」を読んでみる7/もぐもぐ
 
のうちに内包されている。他者の自由に対して責任を負うた私の責任のうちに、人間同士の驚くべき兄弟関係のうちに内包されている」(p39))。

レヴィナスは、ハイデガーを出発点として、自己認識自身であるところの「時間」についての検討を通して「隔時性」概念を見出し、これを梃子に、「自己認識」を、「自己の生存への配慮」から「他者の引き受け」(「責任」)へと作り変えるのである。いわば、「ブラックボックス」である心を、「自己の生存への配慮」という能動的な機能から、「他者の引き受け」という受動的な「機能」に、読み替える。

この「能動」から「受動」への、「ブラックボックス」の読み替えが、実際上どれだけの相違をもたらすものなのかは必ずしも明らかでない。もしかすると、ニュアンスの相違に過ぎない可能性も十分に考えられる。しかし少なくとも、レヴィナス自身はこれを、生存の利害からの超脱の道を見つけるためには、不可避の議論であると捉えたのだった。

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