ステーション/佳代子
 
雑多な思いが縦横する駅構内は人を感じる
喧噪と抗いながら人を感じとる
古里への思い溢れるペーパーバッグ
婦人の膨れ上がったボストンからは家庭がこぼれている
神経症の男は幾度も腕時計を覗き込み
ポケットをまさぐりチケットの所在を確かめる
4つの荷物に溜め息をつき持ち替えながら眉根を寄せる人
私はいったいどんな風に映っているんだろう
ダン! と 誰かの肩先が私の左の耳を打った
すみません と 長身の青年がコクリと頭を下げる
息を切らせて誰かを捜しているらしい
私は微笑みをのせて会釈をかえした
それから胸の奥に熱いココアを流し込み改札へ向かう
閉じ込めておきたいものが凍えないよ
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