子守唄を聞かせて/松本 卓也
今日の酒ははこれまでと
天井の窓を眺めつつ
グラスの氷を持て余し
もはや今日となった明日を
どんな顔で迎えようか
せいぜい二日酔いが関の山
縋りつき泣き出したい本音
一度しか聞いたことの無い声を
もう一回聞いてみたいよ
届かない場所に手を伸ばして
捨ててきたり拾ってきたり
突き放されたり見捨てられたりした
かつて大切だった温もりを
気紛れですぐにでも泣き出しそうな
不安に満ちた声に置き換えて
朝が来るまで精一杯甘えていたい
叶わないなど分かっている
隔てているのは距離だけじゃなく
時間も思想も哲学さえも
おまけから派生した存在など
決して決して唯一にはなりえない
今日君が残した言葉を一つ
枕元において眠ろうか
どんな香りがする酒よりも
寂しさに相応しい子守唄が
聞こえてきそうな気がするから
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