人指し指から、お願いします/木屋 亞万
 
思わず頬が持ち上がりました
彼女は薄っすらと微笑ませた口をつぐんだまま、ゆっくりと首を振りました

「妖怪になりたいのであろう。今からお主を食うてやるから、頭からその醤油をかぶれ。
 狼になりたいと祈った鹿は、食われることでその願いを叶えたというではないか。
 お主もわしに食われれば良い、さあどこから食われたい」
と、洪水のように彼女は話しました
私は驚くとともにその上品な声、話し方にすっかり惚れてしまいました
妖怪になれるならば、食べられることも苦ではありません
しかしどうせなら彼女に食べられる自分をしっかり見ていたい
「人指し指から、お願いします」
人指し指を瓶に突っ込んだ後、妖怪に向けて差し出しました
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