カヴァー/因子
 


いつも考える私は黒い上下の服で
見つめる白い棺の中身に顔がない



たわむれに
両手でそっと抱いた母の
細さに泣きたくて
三歩
あゆめ  ず

たわむれの
ふりをしていた私だけれど
私をかくす腕が欲しかったのだ



何かに抱いてもらうには
私はあまりに巨大になり
たくさんの夜と朝を覆ってしまう
それから、
写真の中で私を抱いていた「昔」は過ぎて
あなたはあまりに小さいのだった







さみしい手の先にあった
男の人の手をとってみた
初めて指を絡めたひとの
知らずにいた骨ばった手のなかは少し湿って
こういう繋ぎ方をすると手の甲にあたる指先は
乾いている って

知らなかったんだ







もうすぐに日付の変わる池袋の
どうでもいい石畳のうえに
眩しさに目を細めながら




早送りで咲く激情を見た

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