季節の変わり目に / いつものイタリアンレストランで/beebee
庭が遠くに見えた
サーモンマリネに歯ごたえのあるビーンズの組み合わせ
前菜と一緒に彼女は何を見て笑ったのだろう?
視線を漂わせ彼女が一瞬微笑んで見せた
彼女の前方には一組の父娘(オヤコ)が座っていた
ブラックチェリーのスカートに黒のニットのカットソー
ポニーテールが似合う娘は十代初めに見えた
輝く星のラメが入った金色のバックを大切に抱えている
彼女は何を見て微笑んだのか?
お澄ましして父を見上げる娘?
穏やかに見守る父親?
それとも遠くに見える幸せな家庭の姿?
一瞬見せた彼女の笑いの意味を考えながら窓の外を見ると
秋の光が黄色いさざなみのように光って見えた
ふいに彼女と目があった
彼女は自然な感じで僕に目で挨拶を送ると
再び話掛けて来る母親に視線を戻した
僕は静かに席を立って
いつものイタリアレストランを出た
季節の変わり目の不思議さ
すっかり晴れた秋晴れの空の下
いつの間にか黄色い幸せな気持ちになったのは
何故だろう?
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