夜のナイフ/ブライアン
 
 彼女は体を後ろに仰け反らせた。酒が頭に回ったようだった。ぐるっと頭を回す。目の間のお菓子の袋を開けるのに夢中だった。乾き物の袋を。友人の一人がベランダから大声を上げる。冬の冷たい風が部屋に入る。夜は彼の声を飲み込む。再び無言となった夜。夜はおぼろげに雪を照らす。彼はもう一度大声を上げた。隣家の明かりが点く。彼をベランダから引き摺り下ろす。さらに、彼は大声を上げた。ビールの空き缶が部屋中に散らばっていた。彼女は電話をかけていた。女友達を呼んでいた。眠かった。閉じかけの目でコップを探した。彼女の隣に一人、腰掛ける。彼は何かを言ったのだろう。誰に対してだったのか。それは分からない。その時のことを一語一
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