あわせかがみ/たりぽん(大理 奔)
月を遠ざけるものを捜して
迷い込んだ森
薄紙で封印された
わたしを引き裂いて
生まれてくるものがある
皮膚がわたしを押さえつけていた
だから、だ
破りとられて流し続ける
温かいものは
錆びたクレーンに染みついた色で
月を遠ざける
空が狭くなり、夜が深まれば
誰もが戻らない暗闇に
永遠に身を置くのだろう
月は遠いだけでいい
手の届かないところで
冷たく、反射していればいい
夜に会うあなたが
いちばん美しいから
月を鏡に映してはいけない
合わせ鏡の結界に
視線を迷わせてはいけない
封印を裂いて流れ出す
夜が戻らなくなれば
透明なものだって
きっと流れ出すのだろう
ほんのすこし
つかの間であったとしても
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