あわせかがみ/たりぽん(大理 奔)
 
月を遠ざけるものを捜して
迷い込んだ森

薄紙で封印された
わたしを引き裂いて
生まれてくるものがある
皮膚がわたしを押さえつけていた
だから、だ

破りとられて流し続ける
温かいものは
錆びたクレーンに染みついた色で
月を遠ざける
空が狭くなり、夜が深まれば
誰もが戻らない暗闇に
永遠に身を置くのだろう

  月は遠いだけでいい
  手の届かないところで
  冷たく、反射していればいい
  夜に会うあなたが
  いちばん美しいから

月を鏡に映してはいけない
合わせ鏡の結界に
視線を迷わせてはいけない
封印を裂いて流れ出す

夜が戻らなくなれば
透明なものだって
きっと流れ出すのだろう
ほんのすこし
つかの間であったとしても




戻る   Point(22)