愛/木屋 亞万
 
った

私はその愛を壁に投げ付けた
軽い音とともに愛は弾け
わずかに壁にこびりついたが
砕けたほとんどが風に流れ去った
最後に最高に綺麗な愛を拾った
今までに拾ったどの石よりも
鮮やかな色彩を持ち、光り輝く愛を
周囲の誰もが羨んだ
盗もうとしたものさえいた
しかし次第に周囲は飽きてきて
また他に新しい綺麗な愛を持つ者を
見つけては、その人を羨んだ
そのうちに私自身でさえ
いつかの熱狂を忘れてしまい
どこかに愛を紛失してしまった

かくして私はたくさんの愛に囲まれ
拾い放題の河原にいたにも関わらず
今は一つも愛を持っていない
もたもたしている間に
川は氾濫し私を下流に押しやった
愛はもう遠い存在となったのだ
どんな種類の愛を持つか
どんな価値の愛を持つかに
こだわりすぎて、愛を
持ち続けることをしなかった
だから愛をわかっているようで
その実、何も知らないに等しい
とても淋しいことだ
戻る   Point(1)