もっさり八兵衛 我が道を行く/けんご
 
った

  それはここで一番美味しいコーヒーで
  クリープも砂糖も入っている
  八兵衛に親切にしてよかったと
  僕は悦に入る

八兵衛の出身はあまり聞かない
僕の隣町のようなところに住んでいたらしい
一人で列車に乗る術を知らないので
彼はいつも誰かを必要としているらしい

  僕が不眠の悩みでベッドと談話室の間を
  行き来する時
  八兵衛は大の字になってぐっすり寝ていたようだ

こんなささやかな苦しみと幸せが
僕らに与えられていると
人には高いも低いもないように思えてくる
病院は案外と面白い所だね

  ただ 僕も社会へと帰って行きたいから
  またどこかですれ違うことがあったら
  やあ ご機嫌いかが?と挨拶をして
  旧交を温めあおう




                         2008.10.2.





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