色彩/aidanico
トレンチコートのボタンを閉めて
顔を隠す様に髪に手を遣り
それでも何か言葉が紡がれるのを
待っていても仕方が無いのに
ガサリガサリと音を立てる落ち葉
ウールコートを纏った老夫婦
小さな子を乗せた乳母車を押す母親
剥げたペンキが景色に溶けるベンチ
彩度の落ちた公園のキャンバスは
鮮やかな色を乗せることを赦さない
それが喩え黒であっても
それが喩え赤であっても
枯れかけた名も知らない花の夏の白さを思う
濁った水には出会いよりも別れが
似合いだよと仕事を辞めた噴水が語りかけても
何故か僕らは一言も喋ろうとしない
それが喩え「然様なら」であっても
それが喩え「然様なら」であっても
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