山上にて/
石瀬琳々
「山はいい」と誰かがいった
笹薮を掻き分けると湖があった
あのエメラルドグリーンはまるで、と
吸い込まれそうになっていると
くわっと巨大な目になった
あれはいつか読んだ本
空一面に見開いた目
あるいは障子を埋め尽くす目
目、目、目、
振り向いた時お前の
第三の目を見たような気がしたのは
まばたきしたかと思うまに
それはふっと掻き消えた
あとには湖面が波打つばかり
ああ、見られてしまった
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