こぼれた部屋/HTNYSHR
 
此処はこぼれた部屋
此処では逸脱の可否を問わない
傀儡師の指先に委ねられたのは
あの誰もが誉めそやす
純粋さで出来たガラス玉の行方
忘れられた時間も眠らずに
今も冴え冴えと運動を止めないでいるのは
退屈ささえも慌ただしく思えるこの時代精神と
いつまでも静かでいるこの部屋の中で育まれた
私の自閉的世界との隔絶のため

私の身体をなぞるこの輪郭がもどかしい
君の顔を描くその線が侘びしい、と

このこぼれた部屋
これは語られることのない物語
私の世界にまとわりつくのは
いつも満たされない
そうして足りないわけでもない心の襞
忘れられた時間も眠らずに
こぼれた夢の中で私は歩く
超然と雲を抜けそびえる彼のいましめの塔を
瞬きの向こうに遠く眺めながら
この部屋の瞬間が涯てるまで


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