秋の夜/吉田ぐんじょう
 
る描いていた
そのうちボールペンのインクが切れて
それでもまだ描いている
ああきっと絶望しているのだ
まるで獣のようである


ビルの屋上から
夜景の中へ
手を握り合ってダイヴした恋人同士が
かすかに発光して
尾を引いて空の彼方へ消えるのを見た


あまり長く夜の中にいると
足が勝手に踊りだして
止まらなくなってしまうので
注意が肝要である
空気が
人間には聞こえない音楽で
満たされているのかも知れない
お墓の前には
半透明の白っぽい人たちがたくさん立って
地面をサンショウウオのような
よくわからない大きい生き物がはいずりまわる
背後から誰かが
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