秋の夜/吉田ぐんじょう
・
仕事帰りの街灯の下
夜がひたひたと打ち寄せている
その波打ち際に立ってふと
えッと吐き気を催した
げぼッと咳き込んだ口から足元へ落ちたのは
幼いころのお友達だ
あの頃いつも遊んでいた
顔も覚えていないお友達
ああこの子はまた空気と遊びよる
とよく言われたことを思い出す
真っ黒い人の形をしたお友達は
目ばかりきょときょと動かして
指でつつくと いやあん と泣いた
・
夜の公園にスーツ姿で
ブランコをこぐ中年がいた
何か報告書のようなものを書いている
そっと近づいて覗きこむと
つる二ハ○○ムし
つる二ハ○○ムし
とそればっかり
ボールペンでぐるぐる描
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