街/佳代子
 
 私とゾマスと赤毛猫は、縦長に伸びすぎたマンションのぶっ壊し計画に取りかかった。電柱より高いなんて生意気だとゾマスは年長者の風をして言う。ゾマスのパラノイヤの目が、戯けた仮面をかぶって私を見る時、必ず指にマッチ棒を持っていた。私の鼻先を燃やしてしまおうと企む。そんなことはさせやしないさ。ゾマスごときに。赤毛猫はいたって真面目だった。遠くの稜線のように、波のあるようで平坦な顔をしている。偏屈猫でローズティーの香しか食べないところなど、ゾマスの左半分に似ている。
 街は静かですべてを消化し尽くした後のように、すっかり落ち着いていた。大人びてみえる。飲み残しのビールが底の方でキョンと音をたてた、道の端
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