山高帽子/リーフレイン
 
80年代はまだバブルが残っていて、
ガクセイだった私はバックパックを担いでさまよった。
音楽家の生家を追って訪れたヨーロッパの城砦の街は小さかった。
数時間もあれば一回りできてしまうほどに小さかった。
朝食のパンはほっぺたが落ちるほど美味く、
財布が千切れるほど高価で、市場のりんごは小さく甘い。
ロートアイアンの小さな看板も、光あふれた出窓のショーウインドウも
あの時見たままの姿で夜の彷徨に現れる。


小僧がベットの床を抜けていく
ああ、あいつも行くところがあるのだと
うつらうつら気がついた
がちゃっと音を立てて閉まる扉に
言い様のない恐怖を感じる
あいつは帰ってくるだろうか?

ああ、
そうか
これが人生というわけだ



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