線路道/ねなぎ
 
道の端に寝転び
土瀝青に耳をつけ
静かに目を瞑る

かつて
この寂れた
遊歩道の
ひび割れと
下には
敷石が埋もれ
眠りに就いていた

ススキやドクダミ
セリやゼンマイ
ヘクソカズラ等が
群生した
田の畦や
畑の脇を通る道

かつては
油と汗の匂い
黒く染まった
煙の煤が
張り付き重ね
巻いていた

虫や蛙の声がする
蛍も居なく
蜻蛉だけ
蝉が五月蝿く
騒いでる

熱気と笛が
響いていた
車軸と擦れる
鉄の音と
人の声とが
こだまする

人は散り
車が走る
名残も消え
橋も無くなる
やがて
朽ちていくように
看板だけが
残された

かつては
働く人々と
乗り交う人で
賑わった

今は公園と
成り代わり
錆びた鉄棒
遊具だけ

整備されて
遊歩道
野の脇
田の端
畑の中
緑を見ながら
歩く道

人知れず
土瀝青に耳をつけ
静かに
目を瞑る

昔は震える
その音が
確かに聞こえた
この道は
今は何の
音もしない


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