校庭に埋めるもの/パラソル
 
校庭の中をバイクで乗り入れた一人の父親が
息子の墓を作りはじめる

まず、水ぶくれのようになったなきがらを
手などがずり落ちないようにしながら
慎重に袋からとり出す

次に、校庭に穴を堀り始める
土が固いので10時間ほど費やす
その間にもカラスがやって来て
息子の体をついばみはじめる

やっと穴を掘り終わると
息子はもうほどんど骨になっていて
小さなレバーのような心臓だけが
骨にこびり付いていた

耳を近づけても
もう音は聞こえない
頭蓋骨にぽつんと空いた穴に目くばせをして
最後の別れをする

そのあとは、骨になった息子を
なるべく見ないようにしながら
穴にほうり込んで
あまり土をのせずに
地面とそっくりな色のベニヤ板をのせる

何も知らない生徒が
足を踏み外して、落ちるように。

上には、石も何も、のせない。

父親は
最後に、一本のろっ骨を記念に持ち帰る
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