犬が走って/たりぽん(大理 奔)
捜したといういいわけを
自分に晒すだけで
飛び出す、暗くなった路上へ
私の声は
暗闇に
失ってはいけない名前
河川敷の草むら
吠える、ほえる
私の声は
犬になる
私の目は奴になる
私の耳は奴になる
ひとの通れない地図を
ひとには見えない場所を
思い描きながら
待っているだろう
私の文字ではなく声を
言葉ではなく声を
声よりも強いもの
夜通し吠え続けても
のどが切れても
吠えるのだ
文字よりも前に
生まれ来るもののために
たったいま
伝えるために
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