アリとキリギリス/
皆月 零胤
ることはなく
ただ船が沈んでゆくように時が流れ
ただ浦島太郎として生まれ
ただ浦島太郎として死んでゆく
ただそれだけだった
乙姫様のハートはルパンが盗んでいったから
別にめでたくもなかった
浦島太郎と金太郎が
吉備団子を食べながらお茶をすすり
そんな話をしながら遠くを眺める
空き地の土管の上では
キリギリスの夢を見ながら
孤独を噛み締めて
今日もジャイアンが届かない歌をアリのように唄い続ける
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