マンボウ/nonya
 

うっかりついてしまった
溜息の先端から
滑り落ちたマンボウが
午後3時17分の紙コップの
コーヒーの中に浮かんでいた

セクハラまがいの
丸い横っ腹を堂々と晒して
背びれと尻びれを
あられもなく広げ切って
ニュートラルな湯気の中に
マンボウは浮かんでいた

オーシャン・サンフィッシュ
とヤツは名乗った
マンボウなんて能天気な名前じゃない
とヤツは言い張った

確かに水溜りに浮かんでいる
傾きかけた太陽に
見えないこともない
と泥水を一口すすりながら思った

見た目で決めつけるのは良くない
とヤツは説教した
君達の目はやっぱり節穴だ
とヤツは毒
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