行かないで/doon
 
 その背中が緩くまどろみ
 ほんのちょっとだけ
 空気の針が研ぎ澄まされて
 目線と目線がすれ違い
 力の無い者達を避けて通るとき
 子供は無力だった

 僕の世界がドアの向こうに行く
 明るい世界と暗い世界
 その垣根がたった一枚でしか仕切られていない
 夜が来る
 冷えて固まった時間が
 これから少なくとも十年は続く
 子供には泣くしかない
 縋るしかない
 それでも確実に壊れてしまう時間が続く
 張り詰めた空気がする
 吸い込めば吸い込むだけ
 子供にはどうしようもないことだけが分かる

 それは母と母の父とのけんか
 水溜りの水さえすすった子供が
 泣いて土下座をし
 顔を上げることもできなかった

 子供でも
 その意味を知り
 額を冷たい廊下に突きつけて
 土下座をすることもあるのだ


戻る   Point(1)