斜路/あおば
 
とをなんでも口に出すので
厚かましい人と思われているが
本当は少し気が小さくて
遠慮深いのだけれども
声を掛けなければ
東京の人には
意味が通じないだろうと
今日も声を張り上げる
なだらかな岡を登ると
彼の住まいがひっそりとしていて
ピカピカ光る太陽電池だけがやけに
目新しくて
屋根の上から雨粒がくるくる回りながら
滑り落ちてくるのが目に見えるようで
見ていたら可笑しくなって
笑いたくなるのを
一所懸命我慢した
我慢することはないのだが
人前で笑ったりすると
邪推されたりする
街中の習慣に従ったままの自分の
中途半端な笑顔が
ゆっくりと崩れていき
湖の底に向かって沈んでいくような気がした。


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