じつと手を見る/木屋 亞万
色々なものに触れてきたはずの
手はくすんだ色をしている
そして力に満ちている
地上のいかなる節足動物も到達できない
しなやかさを持つ
指を伸ばした手の甲をそっと見やれば
4本の指の2つの関節が連なり
緩やかな二曲線を描き
親指の爪の先へと消えていく
それぞれの指の関節からは
波紋のようにしわが広がり響きあう
第一関節と第二関節の波紋の隙間
過去の涙や笑い声が丹精に折り込まれている
手のひらにはどのような直線よりも美しい
曲線がたくさん交わっているのが見える
一本の長くて太い直線よりも
気が遠くなるくらい細くて短い曲線の
交錯しあう方が落ち着きを感じる
手
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