砂の女の楽譜/《81》柴田望
 
神秘的な病だこれは
外界からの様々な抗原
防御するバリアー機能の低下
のみならず
IgE抗体の過剰産生により
じぶんを傷つける
新しい湿疹と結節が
じぐじぐと鮮血噴き出し
乾燥した翌日には
表面が白い粉を吹く
いずれも激しい痒みを誘い
耐え切れずきみは掻くのだ
無意識のうちに
じぶんを傷つける
掻いても掻いても
砂はじりじり家屋へ迫る

この病がきみにもたらされるように
きみを呪った犯人を
ぼくは知っている
身近にいてきみに嫉妬する
あいつだ、と思う
あいつはだれをも呪うので
実際のところだれからも疎まれているのだが
きみはあいつをだれよりも理解して
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