爆裂(上、後)/鈴木
捻転して割れ飛び目が覚めてササラの背の上
――大丈夫?
とピクシー語でのたまう。
――ちょっとつらい。
時間はいくらでもあり、その故に起こる焦燥を紛らわそうと双方が真剣に取り組んだせいもあって語学の首尾はよく、日常会話程度ならこなせるようになっていた。ただ歩けども歩けども周囲の光景に変化が見られず、たまに湧き上がる池によって獅子は命を繋いでいるものの力の減退を否めない。タテガミも減ってきている。
――ごめんね。
――しかたないよ。
何度も繰り返されたやりとりだった。飢餓しない祥平一人で里へ向かうのを提案したこともあったが、にべなく断られた。ササラの、自分が連れて行かないと祥平は必ず街へ戻る、という主張は当を得ていて、なんとなれば親の仇を討ちたい気持ちもあったが、立場や命を投げ打って教師になってくれる好意を裏切るわけにはいかなかった。
――おれ暴力嫌いだし。
ササラの口癖だった。
つづく
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