爆裂(上、後)/鈴木
前は特別な力を持っている。おれの名はササラ。お前は?
――ぼくは。
忘れてしまった。うつむく。金色の毛が一歩ごとに波打ちながら鈍く光って
――祥ちゃん! 祥ちゃん!
目を上げれば涼斗に左頬をはたかれていた。大粒の雨が激甚たる勢いで注ぎ草原は破砕したような音を立てていた。
――皆は帰っちゃったよ。
彼の髪が海草みたいになっていたので祥平は
――わかめ! わかめ!
と叫んだ。双方がびしょ濡れであった。次第に感覚を取り戻し左顔面が痛い祥平が、お返しのつもりで相手の肩を軽く押すと、突風が吹き涼斗を転ばせた。すると起き上がる中途の低い体勢から放つタックルで組み敷かれた。
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