爆裂(上、前)/鈴木
たのは人間の雄で、両手首を縛られて全裸だった。「スタッフ」と印刷されたシャツを着た猿からナイフを当てられようよう歩いていた。俯いた顔は判然としない。
――きゃあ。まじいけめんじゃね?
羆の嬌声に上げた面を照明が白々と映し出した。半開きの口から涎が落ち生気を失った目は涙を流していたが、自らの頭部より大きい舌でなめまわされると嬉しそうにした。唖然とした。父だった。羆の愛撫を受けてよがっていた。祥平は顔を背けた。テツに見つめられていた。その顔は自己紹介時の笑みでなく肉を前にした猛獣のそれであった。舞台へ見入る黒猫をとっさに掴み牙の光るテツの口へ放り込むと舞台へ走った。父を救出せねば!
――猫う
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