変身/りゅうのあくび
 
うにして
彼方へと向かって
恋心がこんがりと焦がされては
そっと深呼吸をしている
ようやく我に返って
天を仰いでから鏡をよく見ると
左耳には鱗が燃えたような
痕はなくなっていた

 *

終わりましたよと
理髪師の女にそう告げられると
影の輪郭でも視るような
記憶の途中で
銀色のはさみの間を
するりと移り逝く
秋の深い夜空には
幻にも似ている命のかけらが
真っ黒く
静かに沈み込んでいた

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