すかんぴん(大変貧しく、無一文で身に何もないさま)/吉田ぐんじょう
 

今も飛ぶように売れている


四百円あれば
わたしは幸せである
煙草と三十円の駄菓子二つ
もしくは牛丼が一杯食べられるから
なまのままの銀色硬貨を
ポケットに入れて
あとは何も持たずに靴を履く
古い型の洋服を着て
ぴかぴかの顔で
化粧品はもう使い切ってしまった

ポストには請求書が山のようにきている
一枚一枚丁寧に
口に入れて噛み締めてやる
すると しゃっくりがひとつでて
それでおしまい
なんてつまらない世の中だろう

ポケットに手を突っ込む
洗い上げたみたいな鮮やかな空に
他の人のうちの洗濯ものが
万国旗みたいにはためいている



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