捨て猫/こむ
捨て猫に 出会った
たいていは逃げるのに
逃げてくれたほうが気楽なのに
どうした訳か すりよってきた
きっと まだ 今日捨てられたばかり
お母さんをさがしているのだろう
今日はお休みだから
ここは人がいっぱい
でも明日からは きっと
ここには 誰も来ない
きっと ここでは生きて行けない
だからといって 連れては帰れない
小学校の頃からいくども味わった感情が
また 同じように再生される
昔と少しも変わらないすがたで
お弁当の魚のフライをほぐしてやると
実にうまそうに食べた
もしかすると これが
最後の楽しいことかもしれないな
と 思いながら見ていた
そして やはり私たちは
子猫のことは 考えないことにして
家路を たどった
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