ひつぎが一匹/ピッピ
う速くなっているのか
遅くなっているのか分からない
一つだけ分かっていることがある
逆方向には進めないということ
真っ暗な底の方向を見つめるのにうんざりして
落ちてきた方向を向いていた
落下地点に背中を向けるのは怖かったが
目を向けるよりは随分楽に感じた
落ちてきた方向は明るかった
あそこに自分が過去にいたなんて信じられない
まるでそれは未来のように輝いていた
光はまだここまで届いているが
底に届いているようには見えなかった
いつかはあの光もただの点になり
そしてまぶたの裏側と同じ色になるだろう
垂れ下がる
君の溶ける音が聞こえる
涙の粒はいつも私を映し出
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