であること/草野春心
 
  

  吊革に
  目、ぶら下げて
  朝を見ていた。



  魂になれない、命。
  レシートのように
  語らず、喋る。
  ヒトになれない、
  複数形。



  大衆の中の云々、
  それさえも
  硬い街の肉に、
  包まれた。
  孤独……であることを、
  奪われた。



  「である」ことを奪われた。



  そして
  目……は溶けた。
  めぐる、まわる
  戯言の中に、
  消えた。


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