感覚器倒錯的迷走期/木屋 亞万
この世はまさに便器ジャングルとばかりに白い陶器が夜の闇に浮かび上がる
男用排泄衛生陶器の排水部分に置かれる球型芳香剤の香りが足掛かりになっているのだろう
足早に帰路につく自転車や単車がいくつも便器につっこんでいく様が潔い
そのうち彼らがサドルにまたがっているのか
便器にまたがっているのかもわからなくなくなってきた
まあかっこつけて座っていても所詮座っているものがかっこ良かったってだけなのだ
家の近くまで来て再びあの河原の前を通ると、象がいなくなっていた
文字化することもなく、便器化することもなく、平然と咲いていた
蛍光橙の花は夜道の電灯とは相性が良くないようだった
一日に渡る脳内部署サミット祭りもようやく終わりを告げたようだ
目を閉じて大きく深呼吸をすると、身体中に香りが行き渡る
目を開くと白濁の月が倒れてくる
それは月ではなく、月並みなうなじ
特大うなじが降ってきた
ようやく主役が現れた
世界の倒れる音がして、秋
戻る 編 削 Point(2)