黄色の憧憬−デッサン/
前田ふむふむ
で、
行ったことのない航海の夢を見ているのだ。
時間を持たない海は、美しく、父は、
黄色く霞む霧の彼方を歩いていると微笑んでいる。
あなたは、朝焼けのレンタカーに乗って、
新しい地平線をつくるだろう。
行き先をもたない伝書鳩のように、
いつまでも止まることなく。
海鳴りが、母の細い足音を奪った。
わたしは、父の言葉を盗んだ。
それを鳴かないかもめだけが知っている。
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