黄色の憧憬−デッサン/前田ふむふむ
1
姉は、猿が、親を殺している夢を、夜ごと見ては、
目覚める度に、硝子が砕けるように、怯えていた。
地味な窓から、手を伸ばすと、
裏庭の空き地越しに見える、マッチ箱の家たちは、
指先から赤く染まっていた。
姉が調理する猿は、純白な皿に盛られて、
鮮やかな黄色をした猿を、私は、ためらいもなく食べた。
海鳴りのように、街の背中から、黄色い胎児たちの顔が、
押し寄せてくる。
指先に引かれた夜明けに。
2
仄暗い待合室が、黄色い閃光をはおり、
壁一面に貼られた紙が、通気孔の風にゆれている。
病人で熱気を帯びた天井の白い息に、沈黙した水滴が床に砕けて――
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