遅れてきた青年の楽譜/《81》柴田望
 
対策の予科練 日傘に雨

  《遅れてきた青年》はわれわれに何も告げない、いや、告げてはならない 青春とは、このやろう許さないぞやそっちよりこっちが上だに縛りつけられた穢れだ 高騰の消しゴム 世界遺産に描かれし相合傘の果て 堕胎した口止め料はさらなる素性の隠蔽だが もはや男でも女でもないかれはゼロから出発できない かれは保守党都知事候補者のよこしまな計画の一部にすぎない 生まれ変われば二度とは戻れぬ線路横切る かれは欲しいものの明確なイメージを創造的思考に焼きつけるべきだったが何もかも不要だ 貧しい借家暮らしでも 新しいじゅうたんとストーブくらい頼んでよかった 部屋の隅々を見直して無駄な空間を
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