哀愁の部屋/榊 慧
 
っています
どうにもこうにもいそがしく
誰も気づきはしませんが
他人の音で消されそうなその視線
確かに憂いの色で、ありました



      静かな処へいきたしど
      さりとて自由はありませぬ
      いっそのこと 僕は
      みんなに失望されてしまいたく
      そのままひっそり ひっそりと
      他人の音を聞く側で
      死んでしまいとうございます



早く早くと願う娘は
この先のことが分かるので
やはり早く早くとせいています
娘はひとをうらめずに
逃れたいので早く早くとせいています
娘は長い黒髪を
すっかり短く切りました。




戻る   Point(6)